北鎌尾根
2014年5月3日〜7日
坂地(記録) 川田・松本・鈴木(このはな)
3日(晴れのち雨)
2日の夜、大阪をたち信濃大町駅前のタクシー会社の駐車場に車を置いて、事務所に寝かせてもらう。5時に起きて装備の準備をし、ゲートが開く時間に合わせて信濃大町を後にする。七倉のゲートが開くまで、ゲートの前でゆっくりしゲートが開くとすぐ高瀬ダムに向かう。高瀬ダムでタクシーを降りて林道を歩き出す。湯俣温泉から水俣川を遡行する。はじめはいい道がついていたので、こんなものかと思っていたがガレをあがりすぎて道がわからず時間を使う。水際のトラバースは、前を行くパーティも大丈夫だったのだからと、腐ったハーケンに結ばれたロープに全体重をかける。どうしても渡渉しなければならないところに出たので、登山靴とズボンを脱いで、ネオプレンの靴下と沢靴と雨具のズボンに履き替える。沢靴は僕だけで他は渓流足袋等だったので急な雪渓の直登とトラバースは僕がキックステップを刻んでいく。千天出会いの北鎌尾根末端が黒々とせまってきたら、天気が悪くなってきて雨が降り出した。せめてP2取り付きまでは頑張ろうと思ったがここでテントを張ることにした。
4日(曇り)
冷たい靴下と沢靴をはいて出発する。あさイチの渡渉は嫌だなあと思ったがすぐ高巻きが始まる。靴がすべるので沢靴の裏を見ると、フェルトソールに厚さ1pほど雪が凍りついている。どおりで滑るはずだ。雪を落とすとフリクションが効くようになって一安心。P2取り付きへ天上沢を渡るところはうまく雪渓が残っていたので水に入らずに渡ことができた。靴やズボンをはきかえて急登を上る。稜線に出たらヘトヘトになった。ここまでは雪もなかったが、しばらく行くと雪山らしくなってくる。気温が高くなるにつれて雪が柔らかくなり、歩きにくくなる。P8付近を芥子粒より小さな点が動いているのが見える。先行パーティだ。歩きにくい雪をよくあそこまで行ったなあと感心する。
少し早いがP4で上を整地してテントを張る。昨夜のびしょびしょのテントに比べると、乾いた暖かいテントは天国のようである。
5日(曇りのち雪)
天上沢側をトラバースしていると、アイゼンが外れて急斜面を滑っていく。運よく50mほど下の木立ちのシュルンドにはまったのが見えたので、松本さんが懸垂で降りて取ってきてくれる。外れるのが少し早くても、少し遅くても取り返しのつかないところだった。片方のアイゼンだけで槍まで行くことになってたらと思うとゾッとする。(すごく時間がかかっただろう)
北鎌のコルに降りるところの懸垂で時間を使ってしまう。独標は巻かずに直登した。独標を上っているころから、雪が降り出し視界も悪くなってくる。独標の上についたら風も強い。狭いけれど風をよけられそうなところを整地してテントを張る。ザックも服も雪まみれだが、テントを立てたらすぐもぐりこむ。ガスを焚いたらテントの中はビショビショで、低いところは水がたまっている。松本さんのロープは水を吸って凍りつき、次の日使えなくなってしまった。
6日(快晴 風強し)
夜じゅうテントを雪が叩く音がしていた。あす、この天気が続いたら行動できるのかなあと心配したが、テントから出ると風が強いけれど雪がやんでいた。
寝る前に手袋をヤッケのポケットに入れるのを忘れて、テントの中にぶら下げていたので、じっとり湿っていた。昨日も濡れた手袋でなんともなかったので大丈夫だろうと思って乾いた手袋を出さなかった。

今日は何が何でも槍につかなければならない。すでに独標を越えているし、天気もいいし、気は楽だが疲れがたまって、荷物が重く感じる。歩いているときはいいが、懸垂のためにロープを出したりしまったりするのがしんどい。それでも、一歩あるけば、一歩槍に近づき、どんどん槍の穂先が大きくなってくる。


指先が冷たいので手袋をとると、指先の色が薄茶色に変わっている。朝から凍った手袋をしていたので、気が付かないうちに軽い凍傷になっていた。すぐに乾いた手袋に替える。
槍の穂のチムニーを抜けて槍の頂上に着いた。拍手で迎えてほしかったが、予想通り誰もいない。握手して写真を撮って肩の小屋に降りる。正直言って、肩の小屋まで降りる登山道が、北鎌尾根のどの場所より怖かった。緊張が解けてしまっていたせいだろうか。ここで事故を起こしたら笑いものだと、気を抜かずに真剣に降りた。
ビショビショのテントにもう1泊しようとはだれも言わず、肩の小屋に泊まることにした。内心、川田さんがテントを張れと言い出したらどうしようと思っていたのでほっとした。
7日(快晴)
今日は上高地に降りて、信濃大町まで車を取りに戻って大阪に帰る。
槍の肩は風が強かったが槍沢に降りると左右の尾根に風がさえぎられて不風状態になる。雪のあるうちは快調だったが、横尾を過ぎるあたりで足にまめができ始めて失速状態になる。上高地に着くころには、徳沢で追い抜いた赤ちゃん連れの夫婦に追い抜かれてがっくりする。ようやく上高地にたどり着いて、タクシーで信濃大町に向かう。